Day: March 2, 2026

電通デジタルCAIOに聞く、テクノロジーとクリエイティブの融合が切り開くAI時代のマーケティング – Cyber Tech

東大松尾研からビジネスの世界へ──AI研究者が経営側に回った理由  ──これまでの経歴についてお教えいただけますか。  電通グループに入社したのは2018年で、それ以前は独立系ベンチャーのCEOを務めていました。大学院では東京大学の松尾豊先生の研究室に所属し、AI研究に取り組んでいましたが、博士号を取得する前に退学し、ビジネスの世界に進むことを決意しました。  研究室時代は、ABテストツールの開発やクリエイティブ最適化のアルバイトをしており、その経験を通じて「これは事業として成立する」と感じました。そこでアルバイト先に正社員として入社し、1年後には独立・事業化の流れの中で自らCEOに立候補することで経営者としてのキャリアが始まりました。  当初はABテストツールの開発を手がけていましたが、やがて「表層的なツールよりも、その裏側のAI・機械学習エンジンの開発に注力すべきではないか」と考えました。電通がその技術を高く評価し支援してくれたこともあり、「このまま上場も視野に入るのでは」と考えた時期もありました。  しかし最終的には、「電通グループの営業基盤の中で事業を拡大した方がスピードも影響力も大きい」と判断し、2018年に社名の「データアーティスト」を残したまま電通グループに参画しました。  その後5年間、AI事業を着実に拡大し、2023年には電通デジタルとデータアーティストが統合。私はそのタイミングで電通デジタルの執行役員に就任しました。  統合から約2年後、AIブームの到来により社内で「誰が責任者を担うべきか」という議論が起こりました。その際に指名を受け、現在はCAIO(Chief AI Officer)としてAI戦略をリードしています。  「負けられない」電通の覚悟──AIシフトを導いた信念とは  ──これまでのキャリアにおける最も大きな功績をお教えください。  2023年4月に電通デジタルへジョインしたことが、結果的に電通グループ全体に大きなシナジーをもたらしたと感じています。  もともと私はデータアーティストという会社でAI事業を展開していましたが、商流の拡大に課題を抱えていました。一方、電通デジタルではAIソリューションの強化を進めており、2022年に「一緒になった方が良いのではないか」という話が持ち上がりました。その提案をすぐに受け入れたのは正解でした。なぜなら、まさにその直後、2022年11月にChatGPTが登場したからです。  生成AI時代の幕開けに合わせてAI事業を全社的に強化できたこと、そしてその戦略を全面的に任せていただけたことが大きな転機でした。正式入社は2023年4月ですが、1月から役員会議に参加し、最初の経営会議でこう訴えました。  「必ず次はAIマーケティングの時代が来ます。検索や広告に加え、AIとの会話を通じて商品を選ぶ時代になります。今から準備しなければ手遅れになります」  このメッセージを一貫して発信し続け、今日まで粘り強く訴えてきたことが良かったと思っています。  最も重要なタイミングで電通デジタルに参画し、今まさに大きく成長しているさまざまな領域で、AIオプティマイゼーションやAI広告などに取り組んでいますが、「絶対にやらなければまずい」と諦めずに言い続けたことが、実績なのではないかと考えています。  広告はマスからデジタル、そしてソーシャルへと進化し、「自分ごと化」が進んできました。AIの時代にはさらに一歩進み、双方向のコミュニケーションが可能になります。広告と対話しながら購買行動が起こる世界が、確実に訪れると信じていたのです。  生成AIをリリースするプラットフォーマーが、この領域で活用しないはずがないですから、私たちも取り組まない理由はありません。  このように強い信念のもと、全社を巻き込んで推進している背景には、マスメディアに関しては、電通グループがビジネスにおいて大きな成功を収めたものの、デジタルメディアに関しては、その成功ゆえに他のデジタル専業代理店と比較して着手が少し遅れたという事実があると思います。  その中で「次のメディアでは絶対に負けるわけにはいかない」という電通グループ全体の危機感と「次の波には遅れずに挑むべき」という共通認識が生まれました。  推進にあたっては対話型マーケティングへの先行投資も比較的少なく、基礎を固めた上で資産を活用して拡大できる環境が整っていたことも追い風でした。「AIの可能性を信じ抜く」という確信、そして「次こそ必ず勝つ」という企業文化の両輪があったからこそ、電通のAIシフトは力強く前進できたのだと思います。  ハッカソンでの衝撃──若手クリエイターに「完敗」した経験からの学び  ──大きな実績を上げるまでにはどのようなチャレンジがあり、それは現職でどう生かされていますか。 ...
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